診療日誌

10月18日(火)

10月に入り、朝晩は暖房を思うほど冷え込むようになってきましたが、晴れた日中は、エアコンに頼らなければ汗びっしょりとなります。気温の変化に身体がついてゆくのが大変な季節です。

肌寒く感じながらの早朝のウォーキングは快適です。鹿ヶ谷界隈は金木犀が随所に植えられており、思わぬ処で微かではありますが甘い香りが漂ってきて心が潤されます。

金木犀の香りに、遙か彼方に過ぎ去った高校時代の光景が胸に浮んできます。

高校二年生の新学期、M子さんと同じクラスになりました。少し小柄で、額が広く、目が大きく、丸顔でハッとするような可愛さでした。三年生になる頃には好きで好きでたまらなくなりましたが、そんな思いは一切口に出来ませんでした。

高校三年の今頃、国鉄の汽車で通学していた私は、朝一番に教室に入ります。一人で自習していますと何とも言えない甘い香りが漂ってきました。ふと顔を上げるとM子さんが鮮やかな濃いオレンジ色の無数の花をつけた枝を花瓶に挿すところでした。

「あー!いい香りやなぁ!この花何ちゅう花なん?」

M子さんが答えました。「金木犀よ。」

「ああ、そう!ええ花やなぁ!」

私はいっぺんにその花が好きになりました。

今でも金木犀の季節が来るとM子さんが心に浮かんできます。

ところが先日職場で金木犀が話題になりました。「私、金木犀大嫌い!トイレの臭いと同じだもの・・!」という人が居ました。

何という幻滅、何という想像力の乏しさ。この素晴らしい金木犀の香りからトイレしか連想出来ないという人を哀れに思いました。

幸いにも私は金木犀の香りで至高の時を過ごすことが出来ています。M子さんへの淡い思いを抱いた自分を懐かしく思い出しながら、今年も金木犀の季節が過ぎようとしています。

中田敬吾

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