自由診療制

聖光園細野診療所では自由診療で漢方治療をおこなっています。
「自由診療と保険診療の漢方はどう違うのか?」と言うのはこれから漢方治療を受けようとする方々にとっては大きな問題かと思います。
たまに、既製品の洋服=保険漢方、オーダーメイドの洋服=自由漢方、との表現を見ます。なるほど・・・・、保険漢方は決められた処方の枠組みがあって、その中で処方しなければならない。自由診療での漢方は枠組みにとらわれることなく、生薬をチョイスできる。しかし、この表現は処方する方の側により当てはまる気がいたします。
既製品とオーダーメイドの違いという捉え方は、ある意味正解でしょうが少し舌足らずな印象もあります。むしろ僕は、幕の内弁当=保険漢方、自由なチョイスで作ってもらったお重=自由漢方、なのではないかなと思います。

処方の組み立ての違い

一度の食事に幕の内弁当を3個食べますか? それともおかずを選んで一つのお弁当を作りますか?
例えば更年期の女性の方で少し気滞(気の滞り)のある方に処方する場合、自由漢方で僕はよく逍遙散・桂枝茯苓丸・香附子(正気天香湯)の組み合わせで使います。とても効果的な組み合わせだと自画自賛しています。
これを保険で作るとなると・・・・桂枝茯苓丸は保険漢方ではそのままあるので使えます。が、逍遙散、香附子は保険適応外となり一般の病院では処方できません。となると、近い処方で代用しなければなりません。
逍遙散=(イコール)加味逍遙散ー(マイナス)山梔子ー牡丹皮
香附子=香蘇散ー甘草ー蘇葉ー陳皮
ですので、逍遙散の代わり加味逍遙散を用い、香附子の代わりに香蘇散を用いるしかありません。しかし、蘇葉や陳皮が余分に入るのは許容内としても、山梔子や牡丹皮は桂枝茯苓丸との併用では桂枝茯苓丸に牡丹皮が含まれることで重複し、また山梔子も作用的に不必要となることがあります。
さらに問題となるのは薬の量です。香蘇散(保険)を使うのは中に入っている香附子のみを使いたいから使うのですが、某社の香蘇散は1回量が2.5gです。その中に含まれる香附子の割合は約4割です。大まかな計算で一回量に香附子末(2.5g×0.4ですね)1g入っていると考えます。
何らかの処方に香附子を加えたい時には、自由診療では、その処方に香附子1g加えて3.5gという1回分のお薬を処方できます。保険漢方では、香附子が入った香蘇散を加え、2.5g+2.5g=5gという処方になってしまいます。5gのお薬を1回で飲むのは大変ですよ。
そこで先ほどの例えのお弁当です。僕が自由診療でつくるお重(お弁当より高級かな?)の逍遙散1.0g、桂枝茯苓丸1.5g、香附子0.25gは、必要な処方がほどよく入って1回の服用量が2.75gとなります。フリーチョイスの出来ない保険で作ると3種類の異なるお弁当を混ぜないと出来ません。加味逍遙散2.5g、桂枝茯苓丸2.5g、う〜んと香蘇散はさすがに2.5g飲むと総量で7.5gになってしまうので自分で1/3程度に調節してみてくれる?なんてことになり、さらには上記した様に不必要な薬味も含まれてしまいます。
欲しいものを食べるために嫌いなおかずも我慢して3個のお弁当を買って全部食べるか、それとも必要な食材のみ買って一つのお弁当を作ってもらうかと言うことです。
お弁当でもそうですが、欲しくないものも全部食べなければならない、となると好きな物も美味しく感じなくなります。同様に必要ないものが多く混じった処方構成は効きがあまり良くありません。
基本は少ない種類の生薬(必要最低限)で効かせることです。
体質改善の処方などは比較的薬味が多いものが存在します。体質改善にはのんびりと時間が必要ですので、多くの薬味を含んだ処方で改善していけば良いのでしょう。ただしこの場合でも必要ない薬味までは加味しませんので、やはり薬味は少ないに越したことはないでしょう。

処方数の違い

買い物をする時に品揃えの悪いお店で、あるものの中から我慢して買いますか?それとも 全て揃った店舗で選んで納得して買いますか?
保険では150種類程度の漢方薬を使うことが出来ます。これを多いと感じるか、少ないと感じるかは人それぞれです。当院には約400種類の処方と、さらに必要に応じて、組上がった処方に加える単独の薬味が約60種類程度あります。
例えば、咽が痛い場合・・・・、柴胡桂枝湯を基本処方に選択した場合を考えます。それだけでは効果はあまりないので、単独の薬味を加えて行かねばなりません。咽の痛みをとる桔梗を加え、炎症を抑える石膏を加え、ばい菌をやっつけるならば金銀花や荊芥連翹粒を加えます。また、鼻水が垂れるのでしたら、さらに白しを少し加えて・・・・と症状に合わせて作れます。
基本になる処方の数が2.5倍以上異なり自由に加味が出来る。ある物の中から選ぶのではなくて必要なものを作る。これは治療を受ける上ではとても大事なことではないでしょうか?買い物も品数多く揃った店で買いたい・・・ですよね?

生薬の違い

コンビニのパック寿司と銀座の寿司屋はネタ(魚)が同じでしょうか?
当院で作る漢方薬は一回で作る量は大して多くありません。東京、京都、大阪の各診療所で使うだけですからたかがしれています。しかし、大手メーカーでは大量に作る必要があります。大量に作ろうが少量に作ろうが効果には大差はない様な気はします。しかし問題は別な所にあります。
残念ながら最高級の生薬は大量に出回らないのです。ですから1回の工程で大量に作る場合、最高級の生薬にこだわれば材料が手に入りません。さらにコストの問題もあり、高級素材を選択することも不可能です。
高級生薬と普及生薬ではどこが一番に違うのでしょうか。それは主成分の含有量が異なると言われています。ですから名前が同じ「柴胡」でも生薬の質により全く異なってしまうのです。まさしくコンビニのパック寿司と銀座の高級寿司屋のネタは同じ魚類でも異なるのと同じことです。

保険診療と自由診療の選び方

さて、ここまで読むと「やはり保険診療よりも自由診療の方が断然よさそうだ!」と思われたでしょう。
でも、保険の範囲で治療可能な方は保険漢方でも良いのではないでしょうか?私自身も大学病院で漢方外来(保険)をずっとやってきました。自分で言うのもなんですが、治療成績は予想以上に良い方ではないかと思います。半分以上の方に良くなったと言ってもらえます。
ところが、中にはどうしても「やはり、保険の範囲では無理だなぁ・・・・」と思うことも事実ですし、「どうも効きが悪いなぁ〜!」と思うこともあります。
保険の範囲ではどうも良くならない、また今ひとつ不満足な方、体のためにはより良い物を試してみたいとお思いの方は、是非とも当院の漢方をお試しになって頂きたいと思います。
迷っておられる方は、まずは保険漢方をお試し下さい。最低でも3ヶ月は続けてみて下さい。(本来は効果はもっと早く自覚しますが)それでもあまり変化が感じられなかったならば、当院の漢方をお試し頂ければ幸いです。

漢方薬は何種類もの生薬より構成されています。夕食のメニューのように、体調に合わせて味付けや付け合わせを変更するのが、本来の使い方です。

漢方薬は夕食の献立に似ている

「魚を切ってそのまま食べた」
「魚を切って、塩・コショウ、バターを使って調理し、同時にキノコもソテーして、ソースをかけたものをプレートのメインに、横にパンと付け合わせの野菜、果物を乗せて食べた」
最初のケースは醤油やご飯、あとは何か小鉢くらい用意しなければ夕食にはちょっと寂しいでしょう。調理して必要な物を加えた方はそれだけで充分でしょう。二番目のケース、それだけで充分な夕食が漢方処方と考えて下さい。
もちろん、付け合わせも、ソースも、季節や体調により微妙に変えることが可能です。現状は、自由診療においてのみ、可能となります。保険の範囲を超えて、組み合わせを自由に処方できることは、当院の一番の特徴でもあります。暑いので少し塩を増やしてとか、寒いのでショウガでも付けておくか、など。また場合によっては同じ様な内容で好みにより魚から肉に変更することも簡単に出来ます。
この各人に合わせて細かく作っていけるのが漢方治療(自由診療)の特色と言えましょう。
葛根湯を例に、もう少し詳しく説明します。

葛根湯=桂枝湯(ケイシトウ)+葛根(カッコン)+麻黄(マオウ)

葛根湯は桂枝湯に葛根と麻黄を加えたものです。上に書いた料理の話にあてはめると、メインの魚のソテーが桂枝湯で、味をつけたソースが葛根、野菜や果物が麻黄という感じです。ここでは分かりやすくこの様に書いているのですが、実際には葛根湯と言うくらいですので、味をつけたソースがとても大事なのです。さらにこの桂枝湯は5個の生薬より構成されています。
桂枝湯=桂枝+芍薬+甘草+大棗+生姜
となると、葛根湯は
葛根湯=桂枝+芍薬+甘草+大棗+生姜+葛根+麻黄
という7つの生薬より成り立っているのです。

生薬の相互作用

それぞれの生薬にはそれぞれの作用が存在します。
葛根湯の主たる目標は、症状としては悪寒がして熱が出そう。熱が出てきた。関節が痛くなって来た。肩や首がこわばる。など、いわゆるの風邪の初期症状です。風邪で葛根湯を処方する時期は、「病邪」が体表付近にあると漢方では考えています。体表にある病邪は体の中に入れて大事になる前にそこから放出するに限ります。その放出作用を持つのが葛根湯です。
風邪が進行して、咳が出る。下痢して来た。高熱は出ないが夕方になると熱が出てくる。などの場合には他の処方が必要となります。
葛根湯を適切な時期に服用したことのある方は、「服用後に体が暖まり発汗して解熱した」などを経験されているのではないでしょうか。それが葛根湯の作用です。葛根・麻黄が肌を開くことにより発汗を促し病邪を放出すると言われています。
現代の化学的見地から考えると、良い説明だとは自分でも思いません。本当に病邪がそこにいて、汗などと一緒に放り出されるのか??などと疑問に思うのは当然でしょう。実際にはこれが漢方の考え方の一つで、風邪の初期に葛根湯を服用すれば多くの方々が深刻な風邪症状に進展せずに軽症で経過したり、あるいは本当の初期症状のみで風邪が治ってしまうというのも事実です。

当院の葛根湯

当院では葛根湯に半夏を加えて、葛根湯加半夏として用いています。半夏は胃の機能を整えます。風邪の時にムカムカしたりして食欲落ちることがありますが、その様な場合を想定したものです。この細かな配合(微妙に付け合わせを加えること)が出来るのが、保険外漢方の可能性でしょう。既製品の洋服もサイズが合えばお直しや、オーダーメードも必要有りません。漢方も既製品(保険適用)でも、自分にピタリと合えば問題はありません。ただ、漢方処方の場合は洋服よりも合う範囲は狭いのではないかと感じています。
さて、今後はそれぞれの疾患別に、まずは既製品の話をして、それぞれの方にこのような加減を繰り返してその方に合う処方を作るという感じでお話していこうと思っています。

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