花粉症

花粉症は、くしゃみ、鼻水、鼻詰まり、目のかゆみなどを主症状とするアレルギー性疾患です。一般的な治療は抗ヒスタミン剤、またはステロイド剤やTh2活性阻害薬などです。しかし眠気や注意力低下の様な重大な副作用が出たり、またあまり効果がなかったりと、あきらめている方も多いのではないでしょうか。そうのような方は「副作用のない、眠くなる心配のない漢方薬」を花粉の時期だけでも飲んでみてはいかがでしょうか?
私の「花粉症」の漢方治療方針を簡単にご説明します。
まずは、あなたの花粉症の主要症状は次のうちどれでしょうか?
1)主にくしゃみ・鼻水ダラダラ
2)主に鼻つまり
3)目だけが痒い
4)だいたい全部あるタイプ

主にくしゃみ・鼻水ダラダラ

このタイプの基本処方は小青龍湯(しょうせいりゅうとう)になります。この処方を使う場合は、「胃がポチャポチャする・・・」などの症状があればさらにピッタリです。まれに小青龍湯を服用されると、疲労感や、具合が悪くなる方がおられます。これは小青龍湯の麻黄(まおう)が悪さをしていると考えられます。
以前、大学病院の漢方外来で、鼻水ダラダラの方に小青龍湯を処方したら動悸が酷くなってしまいました。また別の機会に、この方が風邪をひかれて葛根湯(かっこんとう)を処方したことがあるのですが、この時にも動悸が出てしまいました。小青龍湯も葛根湯も「麻黄」を含むため、この麻黄の副作用と考えられました。この様な場合には苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)を用いれば大丈夫です。これは基本的に小青龍湯を使いたいのだけれども、この様に副作用があって使いにくい場合に用いる処方です。もちろん、問題がなければ小青龍湯を基本に処方を組み立てて行った方が効きはいいと思います。
一方、鼻水ダラダラタイプで「冷え」が強い場合は、麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)が良いでしょう。これは読んで字のごとく、麻黄(まおう)、附子(ぶし)、細辛(さいしん)と体を温める3種類の生薬より構成されています。手足が冷たくて、朝方冷える時に鼻水がズルズルするタイプの方に良いでしょう。これが合う方は、飲んですぐに手足がポカポカしてくるので効きを体感出来るでしょう。ただし、これも麻黄を含んでいますので少し注意が必要です。

主に鼻つまりタイプの方

鼻水もうっとうしいのですが、鼻がつまるのも苦しいものです。私は元々鼻風邪をひくと、鼻がつまるタイプでした。夜寝るときには、右を向けば右の鼻がつまり、左を向けば左の鼻が、上を向けば両方の鼻がつまる。こうなると寝るに寝られなくなり、苦しい思いで長い夜を過ごすことになります。
さて、この様な時の基本処方は葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)柴葛湯加川芎辛夷(さいかつとうかせんきゅうしんい)を用います。柴葛湯加川芎辛夷は柴胡剤と呼ばれるグループの漢方処方で、体質改善の役割も果たします。鼻つまりが中〜長期になってきたときにはとても効果があるでしょう。また鼻をかむととても濃いドロドロの鼻汁が出る場合があります。アレルギー性鼻炎と言うよりか慢性副鼻腔炎の様になってしまった場合には辛夷清肺湯(しんいせいはいという)を使います。
ここでお気づきになった方もおられるでしょうが、いずれの処方も「辛夷」(しんい)と言う名前が含まれています。「辛夷」とは生薬の名前で、モクレン科の木筆の花蕾を乾燥させたもので、鼻の粘膜に辛夷の製剤を滴下すると分泌物が減ります。このために鼻をつまりに使う主な処方には辛夷が含まれるのでしょう。

目だけが痒い方

基本的には目を洗浄して頂いて、眼科で処方される点眼薬の治療が主になるでしょう。漢方治療では「鼻水ダラダラタイプ」のところで書いた抗アレルギー作用のある小青龍湯を用います。鼻水と目の痒みで苦しんでおられた患者様が、小青龍湯で目の痒みも改善されることがあります。

鼻水、鼻づまり、くしゃみ、目の痒み、全部ある方

このような場合は、それぞれの程度を見極め、小青龍湯を用いるのもよいですし、また柴葛湯加川芎辛夷を用いるのもよいでしょう。
ここ最近、「つくし」の花粉症に対する効果が注目されてきています。「つくしを調理して食べたら花粉症の症状が止まった」と言う話も聞きます。当院ではつくしの製剤化にも成功し、積極的に花粉症治療に応用しています。
小青龍湯は基本的には花粉症の第一選択薬になります。鼻アレルギーに対する二重盲検テストでは、くしゃみ発作、鼻汁、鼻閉などの症状の改善が、認められています。また抗アレルギーや抗炎症作用も認められています。どの症状にも使いやすいし、またどの症状にも効果は期待出来ます。まずは小青龍湯を基本に処方を組み立てていくのも悪くはありません。

慢性鼻炎と花粉症の症例

最後に、実際の例をご紹介します。
35歳の男性の方。一年通じて朝方冷えると鼻水が出る。花粉の季節になると鼻水が垂れてくるほど酷くなる。この症状を長年繰り返しておられました。
最初に処方したのが、「小青龍湯6.0g、白芷(びゃくし)1.5g(以上1日量)」でした。これを服用すると鼻水は治まりました。この処方を中心に2年程経過を診ていました。ここ最近の腹診(ふくしん:おなかを押さえて診察すること、漢方独自の診察方法)所見で「四逆散(しぎゃくさん)がいいかな?」と出てきました。特に今の処方が合っていないわけではないのですが、腹診所見を信じて、「小青龍湯3.75g、四逆散4.5g、白芷0.75g(1日量)」と変更してみました。
すると、腹診所見上での改善(変化)はもちろん、自覚症状的にもさらに改善し、いつもあまり感想を話されない方なのですが「わりといい気がする。」とおっしゃって頂きました。四逆散は体質改善の元になる処方です。きっと体も良い方に変わっていくでしょう。
この様に花粉症でも、最初から小青龍湯と決めつけずに、また調子が良いから同じ処方を続けるのではなく、自覚症状や診察所見で漢方薬を加減していくのはとても大切なことなのです。
さあ、花粉症でお悩みのみなさま、漢方を試していない方は是非ともお試しになってみて下さい。上に書いてきた様にまずは小青龍湯から試してみて下さい。それでも効果にご不満がある時には我々にご相談下さい。

東京診療所 細野孝郎 院長
筆者 細野孝郎 (Takao Hosono) 院長 (東京診療所)
昭和63年北里大学医学部卒 日本東洋医学会認定医・日本臨床抗老化医学会名誉認定医
川崎市立井田病院、藤枝市立志太病院、北里大学病院などを経て現在に至る。
北里大学病院では、膠原病・リウマチ・アレルギー外来を経て、漢方外来設立に尽力、担当。
1992年より当院でも診療を開始。
得意分野:内科系疾患全般、月経困難症や不妊などの婦人科疾患、皮膚疾患。また、体質改善や健康維持など、加齢にともなうエイジングケアの漢方にも力を入れている。
趣味:猫、ランニング、フルマラソン(東京マラソン4回、2013年シカゴ)、自転車など。

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