出産後の体調管理

出産すると女性の体は大きく変わります。出産前の基本処方は当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)でしたが、出産後の基本処方は、蒲公英湯(ほこうえいとう)や芎帰調血飲(きゅうきちょうけついん)などに変わってきます。

母乳の出を良くする蒲公英湯

蒲公英湯は蒲公英(ほこうえい)、当帰(とうき)、香附子(こうぶし)、牡丹皮(ぼたんぴ)、山薬(さんやく)の5種類の生薬より構成される処方です。主な効果は母乳の出を良くしてくれることです。特に主薬である蒲公英とはタンポポのことです。タンポポのエキスは昔から中国やドイツでは、婦人科領域に於いてよく使用されてきています。特に卵巣機能不全、不妊症、更年期障害などで効果がみられます。西洋医学的な観点からは、視床下部、下垂体、性腺系の内分泌的な働きがあり、ホルモンの分泌を整えます。また当帰、牡丹皮は産後の滞りがちな血の流れを整えてくれます。香附子には気の流れを良くする作用があります。そして山薬は体の滋養強壮になる生薬です。
つまり、蒲公英湯は母乳の出を良くする生薬を中心に、産後の血の流れを整え、育児疲れの体を補い、また産後の精神的な気分の疲労も抑えてくれる妙薬なのです。

産後の回復には芎帰調血飲

芎帰調血飲は14種類の生薬より構成される、主に産後に用いられる処方です。女性の基本処方である四物湯(しもつとう)を基本にし、さらには気血水の流れを整える生薬が配合されています。構成生薬をもう少し詳しく見ると、当帰芍薬散合甘草乾姜湯(とうきしゃくやくさんごうかんぞうかんきょうとう)の大部分が中に入っていることに気付くでしょう。つまり産前にも飲んでいた当帰芍薬散系統の処方は産後の体調管理の基本にもなるのです。また含まれる牡丹皮、益母草(やくもそう)は子宮内に残った悪露を排出させる作用があります。
この様に産後の処方にも含まれていることを考えれば、当期芍薬散を産前から服用することは、産後の肥立ちも良くすると言えるでしょう。

産後には母乳の出が良くなる蒲公英湯が基本処方となります。母乳に問題がない場合などは芎帰調血飲から開始されても良いでしょう。

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東京診療所 細野孝郎 院長
筆者 細野孝郎 (Takao Hosono) 院長 (東京診療所)
昭和63年北里大学医学部卒 日本東洋医学会認定医・日本臨床抗老化医学会名誉認定医
川崎市立井田病院、藤枝市立志太病院、北里大学病院などを経て現在に至る。
北里大学病院では、膠原病・リウマチ・アレルギー外来を経て、漢方外来設立に尽力、担当。
1992年より当院でも診療を開始。
得意分野:内科系疾患全般、月経困難症や不妊などの婦人科疾患、皮膚疾患。また、体質改善や健康維持など、加齢にともなうエイジングケアの漢方にも力を入れている。
趣味:猫、ランニング、フルマラソン(東京マラソン4回、2013年シカゴ)、自転車など。

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