口内炎

口内炎は種々の原因により発症しますが、大半は原因不明で、通常は何もしなくても治ります。問題になるのは口内炎を起こすような基礎疾患がある場合や繰り返し起こる口内炎でしょう。
基礎疾患により口内炎を起こしている場合には、その疾患の治療が必要になりますが、その他の原因がはっきりしない口内炎は漢方治療の適応となります。
以前は口内炎だけで当院を受診される方は少なかったので、あまり治療経験はありませんでした。むしろ、口内炎の治療は漢方よりもビタミン等が基本ではないかと思っておりました。
他の疾患で通院中の方に「口内炎が発症したのでクスリが欲しい」と言われて処方しているうちに、まとめて見るとかなりの例数になっていました。しかも大半の方が服用されると症状が軽快しています。

甘露飲(かんろいん)と加減涼膈散(かげんりょうかくさん)

口内炎の基本処方はこの2処方になります。お互いに対極に位置する処方でもあります。
甘露飲は「病人が血虚を帯びて緩慢な現れのものに適す」という処方です。分かりやすく言えば、「体力が落ちていて、慢性的に出現する口内炎に効く」と言うことです。処方の内容も比較的穏やかで、体を補う作用のある生薬から構成されています。
一方、カゼをひいたり、また胃や食道に炎症を生じて急性に出現した口内炎や舌炎、口腔内潰瘍には加減涼膈散が適応となります。熱を冷ます作用の強い生薬を中心に構成される処方で、甘露飲よりも体力のある人が適応になります。この処方で注意しなければならないのは、熱を冷ますために大黄(だいおう)と言う下剤にもなる成分が僅かながらに含まれていることです。元々お腹を下している人には使いにくいでしょう。しかしこの様な強めの処方は、体に合っているのならば凄く効果が実感出来るでしょう。

清熱補気湯(せいねつほきとう)

清熱補気湯もたまに口内炎の治療に使います。構成生薬を見ると、作用の穏やかな生薬を中心に構成されています。慢性的な疾患などで体力が低下して発症する場合の口内炎に適応となるでしょう。

口内炎と言うと、保険診療では黄連解毒湯などが第一選択になるでしょう。私も以前は保険診療の大学病院の漢方外来でよく使いました。残念ながら改善した例は殆どありませんでした。この経験から漢方では口内炎の治療は難しいと思い込んでいたのです。
上述の通り、急性の口内炎、体力のある人には加減涼膈散(かげんりょうかくさん)が第一選択になります。 逆に慢性に続く口内炎、御高齢の方やお腹をくだし気味の方には甘露飲(かんろいん)から治療を開始することをお勧めします。

東京診療所 細野孝郎 院長
筆者 細野孝郎 (Takao Hosono) 院長 (東京診療所)
昭和63年北里大学医学部卒 日本東洋医学会認定医・日本臨床抗老化医学会名誉認定医
川崎市立井田病院、藤枝市立志太病院、北里大学病院などを経て現在に至る。
北里大学病院では、膠原病・リウマチ・アレルギー外来を経て、漢方外来設立に尽力、担当。
1992年より当院でも診療を開始。
得意分野:内科系疾患全般、月経困難症や不妊などの婦人科疾患、皮膚疾患。また、体質改善や健康維持など、加齢にともなうエイジングケアの漢方にも力を入れている。
趣味:猫、ランニング、フルマラソン(東京マラソン4回、2013年シカゴ)、自転車など。

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